乗り心地と運動性能の両立

PCVが目指したもの

PCV[パラレル・コンプレッション・バルブ]とは、直訳すれば“並列にセットされた圧縮側の弁機構”つまりメインピストンに加えて並列に働くもうひとつのサブピストンを設けることにより、圧縮時におけるシリンダー内のオイルの流れをコントロールし、理想的な減衰特性を実現させることができました。

逆プログレッシブ特性

ピストンストロークスピードの概ね0.2m/sを境に低速側は運動性能、高速側は快適性に影響を与えるとされています。サスペンションセッティングの主流は低速域の減衰力を高める一方、乗り心地を悪化させる高速域の減衰力を低く抑え運動性と乗り心地を両立させようとする逆プログレッシブ特性(図1)となっています。しかし相反する課題を解決したかに思えた逆プログレッシブ特性でも運動性能を追求しようと予めプリロードを与えることにより、プレートバルブを開きにくくする機構ゆえに、初期の作動が固くなります。つまり高速道路の継ぎ目などの段差による影響を受けやすく、しなやかさに欠けるのはこのせいなのです。

PCVオーリンズ

このハーシュネス対策をもクリアしたのがPCVオーリンズです。
逆プログレッシブ特性のカーブが急激に立ち上がる部分がPCVではスムーズな曲線になっています(図2)。グラフで見るとこれだけの変化ですが、これこそが実際にPCV装着車に乗ってみると劇的な変化を生み出すのです。初期作動時の微小ストロークの動きがスムーズなため、舗装の継ぎ目などによる突き上げ感が認められなくなり、まさに別次元の快適性を実現してくれます。

ひとたびアクセルを踏み込みステアリングを切り込めば、ジェントルでありながらオーリンズならではの運動性能やステアリング応答性は微塵にも損なわれていないどころか、さらにレベルアップしていることに驚くでしょう。
もはや改良でも熟成でもない。全く生まれ変わった夢の中にしか存在しなかったショックアブソーバー。それがPCVオーリンズなのです。

セッティングデータの蓄積と1/1000mmまで極めた工作精度

PCV パラレルコンプレッションバルブ

 PCVは圧側円板シムの背後に一見すると直列に配置されているが、オイルの流れが並行して流れている。これがPCVです。20段減衰調整を踏襲しつつも、PCVの効果で従来品より減衰特性を平行移動する形で働かせることができます。

 PCVが具体化できたのはセッティングデータの蓄積と工作精度のさらなる飛躍によるものです。
 PCVは並列という性格上、複数のポートでオイルが流れるため、セッティングは非常にデリケートな精度が要求されます。このため、オーリンズPCVは1kg単位で解析していた減衰力を100g単位にまで精度を上げ、もはやワッシャーの1枚にいたるまで鏡面仕上げを施すほど工作精度をアップさせています。PCVはこの精度なくしては成り立たない超微細技術の集大成なのです。
 残念ながらエクステリアから従来のオーリンズとは異なる部分を見出すかが困難です。しかしその内部はピストンをはじめ、ほぼすべてのパーツを図面から引き直しています。PCVシステムは8点ほどのパーツで構成されるいたってシンプルなパーツでありながら、想像を絶する程の観点を含んでいます。(特許出願中)